私が国道を急いでいたのには理由があった。
年末から便秘気味で何度か病院に運ばれていた娘。
事故前日、うちの奥さんの実家に腕のいい整体師が来るとの事で、その2日前から腹の調子が悪く学校も休んでいた娘も診てもらおうという事に。
私は翌朝から仕事だったため自宅で寝ていた。
そして明け方............
奥さんからの電話で起こされる。
「今、救急で病院に来てる」
車は奥さんが実家に乗っていってたためバイクで私も病院へ。
救急外来を入ると、医者が何人かでモニターやカルテなんかを見ながらミーティングをしている。
奥さんにどういう事なのか訊くと、義母のマッサージを終えて整体師さんが娘を診ようとした時
娘に発熱があり、顔色が真っ青になって腹痛を訴えたため
「これは便秘じゃなくて内臓が悪いから、すぐ救急車呼んで!」と判断したらしい。
そして私が医者に呼ばれる。
外科、内科、小児科、産婦人科の先生達。
エコーの結果、卵巣に腫瘍のようなものが見られる。
大きさはタマゴより大きいぐらい、女性の握り拳ぐらい。
色んな数値、容態を見る限り緊急手術が必要ですと.............
手術の方法として、腹に3箇所穴を開けて内視鏡で行う手術。
そして切開で行う手術。
前者は、傷が最小限に抑えられ術後の体力的なダメージも少ない。
ただ、そこの病院では救急で行う医者がいないため転送になる事。
内視鏡で摘出の処置が困難な場合、そこから切開に移るため、そうなった時は傷跡も増え、体へのダメージも大きくなる事。
後者は、傷跡は大きく残り術後の体力的ダメージも大きいが、あらゆるケースに対応できる医者が今揃っている。
「どちらで行いますか?」
............これは私自身が覚えのある限り、最も困難な選択だった。
「全身麻酔ですか?」
~「子供さんなので、術中の不安をなくすためにもそのつもりです」
「時間が経つほど悪くなりますか?」
~「一刻も早い方がいいと思います」
うちの奥さんに「切開にしてもらお、傷跡がどうのは後や。まず助けてもらうんが優先やと思う」と話し
奥さんも「そうやね」と。
朝5時半。
奥さんの実家まで車を取りに行き、必要なもん持ってくるわと出て暫く。
こういう時に私がオタオタするわけにはいかないと、病院では努めて冷静に振る舞っていたが急ぐ気持ちがあったのかもしれない。
そして事故に..................
9時過ぎ。
なかなか来ない私が気になりつつも、携帯の電源落としたまま手術室前で待ち
娘の手術が終わった報告を伝えようとした時、私からのメールに気づいた奥さん。
娘の手術はというと、卵巣に腫瘍があったわけではなく、通常なら親指の先ぐらいの大きさらしい卵巣自体がタマゴより大きい、女性の握り拳ほどの大きさに腫れ
何が原因かはわからないけど、その卵巣が腹の中で2回転していたため、卵管が捻れ、血液が流れなくなり壊死しかけてたとの事。
当日は私自身が動ける状態ではなかったため、翌日、何とか娘の病院まで行き、術後始めて顔を合わせた。
まだ11歳ながら、下腹部に10cmほどの縫い痕を残し、片側の卵巣は摘出。
体にメス入れた後、麻酔が切れてからの痛みは私にもわかる。
うっすらと目を開け、私の姿を見た娘は、かすれた声で
「パパ、手、どうしたん?」
~「昨日、病院出てすぐコケてさぁ」
「..........痛くない?」
傷口の痛みで腹が動かせず、呼吸が浅くなっていくため鼻から酸素通して、見るからにキツいくせに私の心配をしてる。
そして。
「ウチのせいでパパは怪我して、ゴメンね...........」
決定的な一言だった。
私自身、好きな事して怪我するのも死ぬのも、それはそれで仕方ないと思っていたし
人間、死ぬ時ゃ何してても死ぬという、生まれた瞬間から定められた運命に向かって生きていくもんだと思っていた。
自身が誰かから心配されるような上等な人間だとも思っていなかった。
バイクや車にしても、何度怪我しようがコワいからと思う事もなく
物は物、壊れりゃまた働いて買えばいい程度にしか考えてなかった。
........が、娘の言葉は重かった。
今回は卵巣だったためどうにもならなかったが、もし、娘に必要とあれば、私の体などどこを使ってもらう事も構わない。
ずっとそう思ってきたのに、それが娘から心配されるとは..........
「もう、バイクには乗らへんよ」
奥さんにしても「まぁ、手足ちぎれたり寝たきりになった訳じゃないし、お金出しゃ買えるもんなんかどうでもいいから、はよ治しなさい」
「あんたの名前を体に彫ってもかまへんよ」とまで言う女にしても「バイクで遠出してる時には願掛けしててんからね」と.........
現状、最も怪我と死の確率が高いのが、私にとってはバイク。
仕事が車の運転というのはあるけど、こちらは「貰い事故も恥」と、プロとしてのプライドをもって臨んでいるもの。
まぁ、いくら気をつけていようが、居眠りトレーラーに突っ込まれてはどうにもならないが........
「あなたが怪我してる時に、看病しにいけないのがツラいです.......」
思ってる以上に周りに迷惑かけてしまったなぁと。
単独で物が壊れ、体は骨折程度で済んだのが幸い。
これが利き腕ちぎれでもしていたら、中指薬指の絶技で女を狂牛病のウシのように足腰立たなくさせる事もできないところ。
ケンタローだったか、首都高から飛び出して脳にまでダメージ受けて寝たきりなんかになってたりしたら..........
そんなこんなで、周りの人間に余計な心配かけさせないよう、未練残さずバイクを降りようと思った次第にございます。
このブログを読まれている奇特な方がいらっしゃるかどうかわかりませんが......
「それぞれ立場はあれど、バイクと過ごす時間、必ずあなたを心配してる人間が身近にいると思っていて下さい」
それだけでございます。
私は、バイクを降りると決断した側の人間になってしまいましたが
このブログを読まれているライダーさんがいらっしゃるなら、楽しく乗り続けられるよう
くれぐれも事故にはお気をつけ下さい。
今日が事故から6日目。
午前中、レントゲン撮った感じでは、裂けた箇所がズレておらず、今のところ手術の必要はないとの事。
痛みをやわらげるロキソニンも、1日3回飲んでいたのがほぼ必要なくなったため
左手でキーボード叩き書いた次第にございます。
そしてこの「絵空事」というブログ。
バイクをメインに、日常生活も織り混ぜ書いてきましたが、ここでやめるか、また日常物をタラタラ書くか
今のところ不明です。
やめてしまう事も考え
「これまで読んでいただいた方へ、ありがとうございました」
ご挨拶を先に言わせていただきました。
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